悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
耳元で囁かれて、ドキン!と心臓が飛び跳ねた。

……楽しいことって何?

それも気になるけど、“二人で”というフレーズが甘い予感を匂わせる。


でも、あたしにも一応門限があるわけで。

これから、しかも男の人と二人でなんて、さすがに簡単には頷けない。


「……ごめんなさい、あたしもこの後はちょっと──っ!?」


断ろうとしたその瞬間、深山さんはあたしの肩を抱いたまま、皆の前に移動する。そして。


「悪い、俺達はこれで抜けるわ」

「えぇっ!?」


あろうことか、こんなことを言い放ったのだ。

目をまん丸にするリカと亜美。あたしも同じく。

そんな中、エロ猿は意味ありげな妖しい笑みを浮かべて、「どうぞご自由に~」とヒラヒラ手を振る。


「だってさ。行こうか」

「待ってください! あたしはいいなんて一言も……!」

「大丈夫、帰りは送るから心配しないで」


そういう問題じゃないんですけど!

あんぐりと口を開けたまま、クールに微笑む彼にぐいぐいと連れ去られていく。


「ひよちゃん!?」


戸惑うような亜美の姿と声は、自動ドアによって無情にも遮断されてしまうのだった。




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