悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
礼拝の後、教室に戻って机の中に入れておいた教科書を出す。

一時間目は世界史だ。なんだか今は頭に入ってきそうにないけど……。

けだるげにノートを取り出して、あたしは唖然とした。


“ドロボウ猫!”

……そう、大きくマジックで書きなぐられていたから。


誰がドロボウ猫だ!

くそぉ、またやられた……! しかも微妙にエスカレートしてる気がするし……!


悔しさでわなわなと震える手を握りしめていると、ふいに前方から視線を感じた。

目線を上げると、クスクスと笑っていたお嬢様グループのうちの二人が、あからさまにあたしから目を逸らす。

……やっぱりあのコ達?

でも確証がないから、責めることは出来ない。


どうすればいいんだろうと悶々と考えていると、前の席の子がプリントを回してきた。

どんよりと重い気持ちでそれを受け取り、一枚取って後ろの亜美に渡す。


「はい、亜美──」


その時、亜美が呆然と見ていたノートが目に入って、あたしは固まった。


“お嬢様気取りのぶりっ子”

彼女のノートにも、そんな罵言(ばげん)が書いてあったのだ。

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