悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
しかし、その日の最後の授業になって、あたしはようやく気が付いた。


「あれっ、ない……」


柳からもらったあのピックが、ペンケースの中から姿を消していることに。


バッグの中かと思い、荷物を全部出して隅まで探したけれど見当たらない。

どこでなくしたんだろうと考えて、思い当たるのは一つ。

化学実験室で中身をばらまいてしまった、あの時だ。



「えっ、ピックがない?」

「そう、柳からもらったやつ……」


授業が終わった後、亜美に実験室に落としてきたかもしれないと打ち明けると、「一緒に探しに行こう」と言ってくれた。


ホームルームが終わると、すぐ教室を出て別の棟へ向かう。

誰もいないとても静かな実験室の中を、転んだ入口周辺を主に二人でくまなく探した。


……でも、あの可愛いキャラクターの絵柄は見付からない。


「もう、何でないの……!?」


泣きそうな自分の声が教室に響き渡って、あたしは初めて痛感した。

柳がくれた、小さな小さなプレゼントが、あたしにとってこんなにも大事なものになっていたことを。

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