悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

 *


“文化祭前は土日も学校で練習してるから、お前も来いよ”


……そうひよりを誘ったのは、フライヤーについての話し合いのためだけじゃなくて、ただ会いたいがためだったりする。

そんなこと言うわけないけど、メンバーの皆もとっくに気付いてんだろうな。


5月中旬のその日は、ギリギリ雨粒を堪えているかのような空模様。

土曜だから部活がある人しかいないため、難なく俺らが集まる視聴覚室に入らせることが出来た。


「これが今までの先輩達が作ったフライヤー。と、参考までに学祭のしおり」

「ありがとう。わぁ、やっぱりすごいね~! これとかカッコいい」


相模がテーブルの上に広げたたくさんのフライヤーを見て、ひよりが目を輝かせている。

カラフルだったり、モノトーンだったり。ポップなイラストや、乱雑なようでセンスのあるレタリング。

それぞれ個性的で、たしかに見てるだけでも面白い。


「これってどのバンドも作ってるの?」

「決まりはないから作らないバンドもあるよ。俺らも去年は作らなかったし」


涼平の言葉にふむふむと頷くひより。

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