悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
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“文化祭前は土日も学校で練習してるから、お前も来いよ”
……そうひよりを誘ったのは、フライヤーについての話し合いのためだけじゃなくて、ただ会いたいがためだったりする。
そんなこと言うわけないけど、メンバーの皆もとっくに気付いてんだろうな。
5月中旬のその日は、ギリギリ雨粒を堪えているかのような空模様。
土曜だから部活がある人しかいないため、難なく俺らが集まる視聴覚室に入らせることが出来た。
「これが今までの先輩達が作ったフライヤー。と、参考までに学祭のしおり」
「ありがとう。わぁ、やっぱりすごいね~! これとかカッコいい」
相模がテーブルの上に広げたたくさんのフライヤーを見て、ひよりが目を輝かせている。
カラフルだったり、モノトーンだったり。ポップなイラストや、乱雑なようでセンスのあるレタリング。
それぞれ個性的で、たしかに見てるだけでも面白い。
「これってどのバンドも作ってるの?」
「決まりはないから作らないバンドもあるよ。俺らも去年は作らなかったし」
涼平の言葉にふむふむと頷くひより。