悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「どんな感じにしてほしいとか、要望はある?」


椅子に座ったひよりが、取り巻く皆を見回して言い、一瞬黙り込んで考えた俺達は。


「カッコ良く!」

「スタイリッシュなのがいいな」

「……パンチのあるやつ」


人差し指を立てる涼平に顎に手をあてる相模、ドラムセットを拭きながらぼそりとサブちゃんが、口々に言った。

皆の意見をまとめてやろうと、棒付きの飴を舐める俺も、片方の頬を膨らませつつ口を開く。


「とりあえずいい感じに」

「む、難しい……!」


頭を抱えたひよりは、あんたのが一番ぼやっとしてるし!と俺につっこんでくる。


「だーいじょーぶ。ひよりの描いたやつなら文句言わねぇよ、俺らは」


眉根を寄せているひよりの後方に回り、彼女の肩を抱くように手を回してぽんぽんと叩く。

もう片方の手で飴の棒を持ち、困り顔で俺を見上げる彼女に笑みを向けた。


「頑張ったらごほうびやるからさ」


ん、とまだ半分も舐めていない緑色の玉をひよりの口に近付けると、反射的に唇がわずかに開く。

その唇の隙間に、無理やり飴を挟んでやった。

< 206 / 292 >

この作品をシェア

pagetop