悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
甘い物も嫌いなくせにケーキを買ったなんて、本当にあたしのことを釣ろうとしただけだったんだ。

ただヤれればそれでよかったんだ……。


「じゃーね、ひよりちゃん。と、そのオトモダチ」


じわじわと流れ出る怒りをそのままに、深山さんはヒラヒラと手を振って夜の街に向かっていった。

その外見だけはいい後ろ姿を眺めながら、柳が呆れたように呟く。


「……最低なヤローだな。よかったな、遊ばれなくて」


そんな柳の言葉が引き金になり、あたしは小さくなる最低男目掛けてケーキの箱を振りかぶった。


「こんなもの……っ、いらねーよバーカ!!」


暴言を吐いてぶん投げた箱は、建物の角を曲がった彼に当たるはずもなく。

ホテルから離れた暗い道路に、無残にべしゃりと叩き付けられた。

あんな男に引っ掛かりそうになった自分が悔しくて、じわりと涙が込み上げる。


「人を何だと思ってんのよ! 女は性欲処理の道具じゃない!!」


どうよ、あんたがお嬢様だと思ってたあたしは、おしとやかでも上品でもない女なんだよ。

そんな、今となってはどうでもいい反抗をするように、道行く人の目も気にせずあたしは叫んだ。

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