悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
再び手を繋いだあたし達は、カップルと入れ替わるように展望台を降りた。

バスを待つ間も、それに揺られている間も、あたし達に特別な会話はない。

ただ、ずっと握られている手のぬくもりを感じながら、あたしはぼんやりと思考を巡らせていた。



……さっき、柳は何でキスしようとしたんだろう。

輝く街の明かりに包まれて、肌に触れて。ロマンチックな雰囲気に呑まれそうになっただけだったのかな。

柳ならそれもありそう。そうであってほしくはないけど……。


それに、『俺も協力するから』っていうことは、柳はお父さんに会うつもりなのかな。

でもそんなことしたら、確実に一緒にいたってバレるし、また何を言われるかわからない。

進路のことに関してはあたしの問題なのに、また柳を巻き込んじゃって本当に自分が情けないよ……。


これからのことを考えると不安ばかりで、ずっと俯いたまま。

でも、そんなあたしの手を握る強さが、わずかな勇気をくれるから。

進路も、好きな人のことも、何を言われても自分の意志を曲げるつもりはない。

改めて真っ向勝負しようと、心に決めた。




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