悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「あー元気元気。柳も亜美のこと気にかけてたよ。仲良くやってるかーって」


高校の全学年が続々と集まる講堂に入りながら言うと、亜美は一瞬目を開いた後ふっと笑う。


「そっかぁ。柳くん、そんなこと言ってたんだ……」


そして、何かを考えるように目を伏せる。

……亜美?

何かあったのかと思ったのもつかの間、彼女はすぐにいつもの柔らかな笑顔に戻っていた。


なんだろう、何かが引っ掛かる気がする……けど、その正体はわからない。


「会えてよかったね、ひよちゃん」


にこりと笑う亜美に、あたしも今感じた違和感は一旦胸に留めて、軽く笑いながら返す。


「いやー別に会いたかったわけじゃないし」

「なになに? 誰よ、その柳くんって」


興味津々な様子で間に入ってくるリカ。

男子の話題となるとすぐさま飛び付いてくる、その図々しさはいろんな意味でスゴい。


「あたしと亜美の、小学校時代の友達の大崎柳ってやつ」

「なぁんだ、同級生? 年上以外は興味ないのよね~」

「……それは残念でしたね」


……もうどっか行ってくんないかな、このコ。

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