悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
放課後、あたし達は三人で、葉藍から徒歩二十分のいつも利用する駅の南口にいた。
ほとんど電車に乗らないリカはもちろん、あたしと亜美も実は南口にはあまり来たことがない。
大通りがある北口とは違って、こっちにはあまりお店もないから人通りは少なかった。
「地図でいうとこの辺りだよね」
「もしかして、あれ?」
亜美が指差した方を見ると、レンガ造りの壁と大きな格子状の窓、年代物っぽいランプが目を引く建物がある。
喫茶店“スロース”と書かれたそこは、あたし達が探していたお店とビンゴ。……だけど。
「たしかにちょっと入りづらい……」
高校生には場違いじゃ?と思うような昭和感満載の外観は、写真で見ただけではわからなかった迫力がある。
こんなところにあたし達が入ってもいいものか……。
「だからあなた達を誘ったんじゃない。せっかくここまで来たんだから、ほら!」
「うぅ~」
リカにぐいぐいと背中を押されながらも躊躇するあたしと亜美。
でもリカが持っているチラシには、“学割デーあります”って書いてあったし大丈夫だよね?