悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
その日の夜、あたしはベッドの上でなぜか正座をし、その前にスマホを置いて、それが鳴るのをじっと待っていた。
何でこんなにしっかり待ち構えてるんだろう……たかが柳からの電話なのに。
あたしおかしいよね? 自分で自分がよくわからない。
正座をしたまま腕を組み、うーんと首をかしげていたその時。
着信を知らせる音が鳴り始め、ドキッと心臓が飛び上がる。
「うわ、来た!」
表示される、未登録の番号。
なぜか緊張しつつスマホを取って操作し、ゆっくり耳に当てた。
「……も、もしもし」
『ちゃんと起きてたな』
クスッと笑いを含んだ第一声。
なんだか耳と胸がこそばゆい。なに、この感じ。
「寝ないよ。まだ9時だし」
『お子ちゃまのひよこはもうオヤスミの時間じゃねーの』
「お子ちゃまじゃないってば!」
くだらないやり取りだけど、なんだか笑っちゃう。
顔が見えない分、柳の笑い声や、息づかいに意識が集中して、やっぱりドキドキする。
思えば、男子と電話で話したことすらなかったもんな……。