悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「ギター弾いてる人って手大きいの?」

「いや、そんなに関係ないよ。俺は大きい方だと思うけど」

「見せて見せて~。わぁ本当だー大きい!」


そう、この恋愛マニュアル通りのボディタッチ作戦を恥ずかしげもなく実行するリカお嬢様のように、亜美にも恋を……。


「そりゃリカちゃんよりは大きいでしょ」

「あはは、そっかぁ。わ、すごい指先が固い!」

「あぁ、ギター弾いてると手の皮が厚くなるんだよね」


柳の手をにぎにぎと触るリカに、なんだか無性に腹が立つ。何よ、あのコッテコテなアピールは。

柳も何とも思ってないような顔してされるがままだけど、そんなんでいいわけ?

それともボケ柳だから、あれがアピールだってわかってないとか?

あー、いずれにせよイライラする……!


残り一口のチキンステーキに、グサッとフォークを突き立てるあたし。だけど。

……ちょっと待って。

あたしがリカに怒る理由なんて何もないじゃない。


リカは柳のことが好きで、今必死にあいつの気持ちを自分に引き付けようとしてる。

それは何もおかしなことではなくて、むしろリカにとっては大事なこと。

それなのにどうして、あたしはこんなにイライラしているんだろう──。

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