一難去って、またイチナン?
一難去って、またイチナン?

「白石先輩、どうしたんですか?」



遠慮がちな声をかけてくれたのは、隣の席の黒田くん。



僅かに尖らせた唇、眼鏡の奥には潤んだ黒い瞳が揺れている。心配そうに眉を寄せた黒田くんが、そっと首を傾げた。



意図せず漏れてしまった私の溜め息に、ご丁寧に反応してくれたらしい。



「ごめん、何でもないの、気にしないで」

「はい……本当に大丈夫ですか? 何かあったら言ってくださいね」



黒田くんの気持ちは有難い。
だけど何かあったとしても、彼の頼りなさげな声に縋ろうとは思えない。



「ありがとう、ごめんね、本当に気にしないで」

「はい、わかりました」



黒田くんは納得できないような顔をしながらも頷いて、パソコンへと向き直った。



やれやれ、
ちよっとめんどくさいけど可愛い後輩。



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