真夜中のパレード
ふわりとゆるいウェーブのかかった髪型で、美しい透子が被ると高貴なお姫様のような雰囲気を醸し出した。
普段の透子は首の中程までしか長さがないので、カツラを被るとずいぶん印象が変わった。
「ふぅん、悪くねぇ」
冬馬も満足したように頷く。
透子も鏡を取り出し、嬉しそうに長い髪を眺めた。
「ありがとう、冬馬!
これくらい長いと、完全に違う人みたいだね!」
「お前、普段の髪型そっちにしたら?
ざくざくに切りやがって」
うろたえながら、かつらの下にある不揃いな重ったらしい後ろ髪を引っ張る。
「い、いいんだよ、私はこれで。
自分で切って、わざとやぼったい髪型にしてるんだから」
冬馬は深い溜息を吐く。
「お前さぁ、どうしてそういうもったいないことを……
ダイヤの原石に金メッキ貼り付けるようなもんだぞ」
「いいの、私はこれで!」
「にしたってなぁ」
「それより冬馬の話をしてよ!」
「はいはい」
冬馬は彼女を説得するのを諦め、他愛ない日常の話を始めた。
彼は口が上手く、いつも楽しそうによく喋るので口下手な透子も安心して聞いていられた。
冬馬はハイボールをあおり、にっこりとやわらかく笑った。
「それで彼女、たまにモデルとかしてるんだけどさ」
「あれ? 冬馬の彼女って、看護師さんじゃなかった?」
透子はアイスティーをストローでくるくるとかき混ぜる。
冬馬は事も無げにあっさり言い切った。
「それは別の彼女」