真夜中のパレード


  ☆


上条は病室の前の廊下で椅子に座り、
どこを見ても白い建物の中をぼんやり眺めていた。


七瀬もただの上司にこれ以上立ち入ってほしくないだろう。

自分の役目はもう終わりだ。



そうは思っても、
彼女を一人にして帰るのもそれはそれで気が咎めた。


叔父はすぐに来られないと言っていたが、
他に親戚はいないのだろうか?


扉からは、時折透子が母親に語りかける声が
聞こえてくる。



……このままもし彼女の母親が死んでしまったら。


そうしたら七瀬はどうするのだろうか。


そう考えると、
どうしてもその場を動くことが出来なかった。





どのくらいの時間がたったのだろう。



上条は瞳を閉じ、
眠るように椅子に座り続けていた。


……しばらくして、
扉の向こうから悲痛な泣き声が聞こえてきた。


何が起こったのかはすぐに検討がついた。

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