真夜中のパレード


上条は顔に薄い笑顔を刻む。


「正直、悲しかったよ」


そしてゆっくり目を閉じた。


「でも、いいんだ」



自分はどうしてこんな話をしているのか、
不思議だった。


「最後を見送れただけで、よかったと思ってる」


けれど、どうしても今、
七瀬透子に聞いて欲しいと思った。




透子は泣きながら、
それでもにっこりと笑顔を作る。



「上条さんは、強いですね」



上条も、なぜだか分からなかったけれど

思わず涙があふれそうになるのを堪えた。



七瀬透子は、
いつも朝早く来てフロアの掃除をしている。


誰かに仕事を押し付けられた時も、嫌な顔一つせず
笑って引き受けていた。


もっとはっきりした態度をとればいいのに。
消極的な彼女に、ずっといらいらしていた。



お人好しで、
そのくせ弱いかと思えば
どうしようもなく頑固な所がある。

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