真夜中のパレード


上条自身も、
まだ自分の告げている言葉を半ば信じられないと思っていた。


想像したことすらなかった。


別れを告げるのなら、
絶対に彼女の方からだと思っていた。





自分の方から、
こんなに愛しい人の手を離すなんて。




「好きな、人……」



向かいにいる天音の瞳には、
まだ理解出来ていないように
何の感情の色も浮かんでいない。





この言葉を口にすると、
彼女を深く傷つけるだろうことは分かっていた。



けれど、
言わずに七瀬透子への気持ちを抱いたまま

彼女と付き合うのを続けても、
結局傷つけることになる。


天音の表情が沈んでいくのを見るにつれ、
罪悪感が胸を締め付けていく。





七瀬透子のことを
彼女と同じように好きだと思っているのか?




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