真夜中のパレード
透子の顔がくしゃっと歪む。
気遣うように、上条が目を細める。
「別に七瀬のせいじゃない」
「私っ……!」
上条は優しく微笑んだ。
「あまり深く考えるな。
なるようにしかならない」
そう言って、透子の横を通りすぎて行った。
透子は何も言えずに、ただ立ち止まっていた。
あの夜、突き放した時とは逆だと思った。
彼は、『いつものように同僚として』接してくれたのだろう。
それでいい。
それが望みだった、はずなのに。
気が付くと、透子の頬を涙の筋が伝っていた。
あと何週間かすれば、
もうこんな風に悩むことすら出来なくなる。
たとえ恋人でなくなっても、
彼がここにいるのは当然だと、なぜだかそう思い込んでいた。
会社で彼が仕事をするのを見ても、
彼の隣を歩いても、
いつか彼が他の女性を好きになっても、
平気になるのか。
そんな風に悩んでいたけれど、
これからはもうそうやって考えることすら出来なくなる。