真夜中のパレード


透子の言葉を聞き、
驚いたように上条が動きを止める。


透子は顔をくしゃりと歪め、
彼の手をぎゅっと握った。


「ずっと嘘をついてて、ごめんなさいっ!
ずっと騙していて、ごめんなさい!」


「いいよ、もう」


次から次へと涙が流れ落ちる。


「本当はずっと、直樹さんに触れたかった」


「うん」

「ただの職場の知り合いじゃなくて、
きちんとした恋人に戻りたかった!」


大きな手が透子の背中にまわされ、
強く抱きしめられる。


彼の香りが懐かしくて、
また涙が零れた。


「じゃあまた、戻ろうか。
それで、一緒に花見に行こう」


「はい」


「約束したからな。

また一緒にあの公園に行こう。
それで今度は、桜を見よう」


「はい!」


透子が笑いながら顔を上げると、
自然に唇が重なった。


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