真夜中のパレード




「はぁ」


やっと昼休みになった。
昼までの間も、木本につらつらと嫌味を言われた。


周囲から見ると特に失敗らしい失敗もしていないのだが、とにかく木本は何かと文句を言いたくて仕方ないらしい。


透子もそれをもう自分の役割として受け入れているような所があった。
どうせ反論しても、また理不尽に文句を言われるだけだからだ。


午前中木本に怒られたことを思い出し、気分が沈む。
食欲もない。
憂鬱な顔でトイレに向かった。
とにかくあまり人のいない所に行きたかった。



個室から出ようとすると、同期の女子社員が洗面台で自分のことを話しているのに気づいた。


思わず心臓がはねる。
開けかけた鍵を、そっと閉める方向に戻す。
出るに出られない。


腹の下辺りが、またじくじくと小さく傷んだ。
間の悪い時に来てしまった。


「七瀬さん、かっわいそー」

「あいつまじうざいよね。
たいして仕事してないくせにいっつも偉そうに。お前は何様だっつーの」


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