足音
南を追いかけ、南にくっつく。
どうやら彼は、連れ出すつもりではなかったらしく。
ただ単に、言葉を紡いだだけだったらしい。
証拠に、私に歩幅を合わさない。
頑張って追いかけても、彼は自分のペースでいってしまう。
スタスタスタと。
パタパタ頑張っても、彼はそれに答えない。
だけど、来るもの拒まずと言ったように、私を受け入れてくれた。
1週間。
気がつくとそんなに経っていて、かなり驚いた。
居心地はよかった。
彼の隣は、油断できない楽しさと違い、安らぎがあった。
拒まない彼の優しさが、どうしようもなく嬉しかった。
だから、たぶん自惚れた。
「稲毛がどうしたの?」
「あ、あー…なんか、言い寄られててさ」
彼は、好きじゃないタイプだった。
クラスの中心にいる私と同じ目線にいる彼。
安らぎが南と違って全くない。
だから断る気だった。