禁じられた放課後
二人と夕焼け


初夏を感じさせる涼し気な風が教室内をすり抜けると、制服姿もようやく落ち着き始めた一年生が一斉に窓の外へと視線を送った。

青い空で、雲と小鳥が戯れている。



「先生、どうせ黒板なんて使わないんだから、屋上で授業しようよ!」



その言葉に驚きザワザワと騒ぎ出す生徒達の中、立ち上がって得意気に笑うのは櫻井瑠未。

もちろんこの瑠未も今年入学した一年生で、昨年までは中学での直哉の生徒だった。

短い髪で活発に動き回り、あっという間にクラスのムードメーカーになるほどの存在で、やることも言うこともとにかく男子生徒顔負けの女子だ。



「櫻井、中学とは違うんだぞ。大人しく座れ」



直哉が半分呆れて眼鏡の位置を直す。

しかしそんなこともお構い無しで瑠未は直哉に歩み寄った。



「発音は絶対女吉原の方が上手だったよ〜」



いたずらに口を尖らせてクスクス笑う。

他の生徒は不思議そうにその様子を眺めていた。




< 22 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop