禁じられた放課後


「早瀬、もう帰りなさい」



直哉が優しい表情を落す。

その横で早川は疑いの眼差しを向けた。



カバンを手に取り教室から出て行く涼香を、張り詰めた空気の中で二人が見送る。

その場に流れ込む風だけが、直哉と早川の間にあるものを感じ取っていた。



「彼女は優秀な生徒ですよ。吉原先生の軽はずみな行動で彼女の将来を潰す場合だってある。それを分かってるんですか」



早川はポケットに手を入れ廊下を覗いた。

遠ざかる足音に耳を傾け直哉を振り返る。



「……僕にどうしろと言うんですか」



直哉のその言葉に早川はあやしく笑みを浮かべた。

二人の顔に、もう陽射しはさしていなかった。




< 37 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop