禁じられた放課後
「早瀬、もう帰りなさい」
直哉が優しい表情を落す。
その横で早川は疑いの眼差しを向けた。
カバンを手に取り教室から出て行く涼香を、張り詰めた空気の中で二人が見送る。
その場に流れ込む風だけが、直哉と早川の間にあるものを感じ取っていた。
「彼女は優秀な生徒ですよ。吉原先生の軽はずみな行動で彼女の将来を潰す場合だってある。それを分かってるんですか」
早川はポケットに手を入れ廊下を覗いた。
遠ざかる足音に耳を傾け直哉を振り返る。
「……僕にどうしろと言うんですか」
直哉のその言葉に早川はあやしく笑みを浮かべた。
二人の顔に、もう陽射しはさしていなかった。