禁じられた放課後


直哉は席を立ち寝室へと足を向けた。

扉の前に行くと、息をはずませた美咲が寝室から飛び出してくる。



「あっ、直哉。見て、この雑誌……。直哉……?」



直哉は黙って美咲を抱きしめていた。

もう何も、自分の気持ちさえも分からなくなっていた。

自分がどうしたいのか、何を思い、何を感じているのか。



ただこうして美咲を抱き締めることだけは、誰からも間違いだとは言われない。

責められることのない、そんな安心感が自分を慰める。



そして美咲は、直哉のその態度になぜか悲しさを感じていた。

意志とは関係なく、勝手に涙が頬を伝う。

直哉はそれに気がつき、それでも何も言わずまた腕に力を込めた。



自分の心さえも分からないままに、美咲の想いを自分の中に染み込ませようとする。

床に落ちた雑誌のページが、風のない足元で静かに音をたてていた。




< 44 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop