禁じられた放課後
直哉は席を立ち寝室へと足を向けた。
扉の前に行くと、息をはずませた美咲が寝室から飛び出してくる。
「あっ、直哉。見て、この雑誌……。直哉……?」
直哉は黙って美咲を抱きしめていた。
もう何も、自分の気持ちさえも分からなくなっていた。
自分がどうしたいのか、何を思い、何を感じているのか。
ただこうして美咲を抱き締めることだけは、誰からも間違いだとは言われない。
責められることのない、そんな安心感が自分を慰める。
そして美咲は、直哉のその態度になぜか悲しさを感じていた。
意志とは関係なく、勝手に涙が頬を伝う。
直哉はそれに気がつき、それでも何も言わずまた腕に力を込めた。
自分の心さえも分からないままに、美咲の想いを自分の中に染み込ませようとする。
床に落ちた雑誌のページが、風のない足元で静かに音をたてていた。