禁じられた放課後
涼香の来る気配のない教室はいつもより暗く感じる。
窓の鍵を確認した直哉は、美咲との待ち合わせに間に合うよう帰り支度を始めた。
今日あのことを涼香に伝えなくて済むことに、わずかながらホッとする。
教室を出ようとすると、壁に貼られた海外の子供達のポスターが目に入った。
夢は変わっていない。
それなのに、自分が今取るべき行動が分からなくなっていた。
家に帰ったらもう一度ゆっくり美咲と話そう。
そう考えながら紺色の傘を広げ、直哉はバス停に向かった。
「分かるかい?受験に英会話は必要ないから、予備学習をするなら数学をやった方がキミのためなんだよ」
「わ、私は数学なんて……別に」
涼香の肩に早川の手が重くのしかかる。
鋭い眼差しが、陰る教室で恐怖心をあおった。
「吉原先生にも是非と頼まれたんだ。彼も困っていたらしいからね。キミがもし受験に失敗したら自分のせいになってしまうんじゃないかって」
「吉原先生が……?」