禁じられた放課後
広葉樹の葉が目の前を吹き抜ける。
体温を下げた背筋には風と共にツンとした冷たさが走った。
細く隙間を開けられたログハウスの扉。
涼香がその奥を怯えながら覗くと、そこにはガラスのパネルでコーティングされた星図を手にした瑠未が立っていた。
瑠未もあの話を耳にしたのだろうか。
涼香はその扉をゆっくりと開けた。
「あ、早瀬先輩!」
そのいつも通りの笑顔に癒される。
涼香もまた瑠未に向かって笑みを返した。
望遠鏡の置かれたケースを前に、簡易な折り畳み椅子に座って二人で星の話をする。
追い詰められるようなもののないこの和やかな会話に、涼香は落ち着きを取り戻しつつあった。
「そういえば先輩、この前の流星群見ました?」
「あ、うん。櫻井さんは見れなかったの?」
「そうなんですよ。ここに来るつもりはあったんですけど、ちょっと急用ができちゃって。先輩はここで見たんですか?」
ほんの少しの緊張が身体に広がった。
深く話して行けば、余計なことまで話さなければいけなくなるのではないか。
次第に口籠る涼香。
しかしそれに気がつくことなく、瑠未は何かを思い出したように突然立ち上がったのだ。
「そういえば先輩。吉原先生って何かしでかしました?」