先生の手が触れる時



「気配…なさすぎです…」
「よく言われる。ドア開けても気づかない君もよっぽど鈍いと思うけど」
「……集中してたんです」

そう言うと、先生はそっか、と笑って
コーヒーをいれる

「……そんなに、気に入ってくれると嬉しいね」
「え?」
「自分の描いた絵を見て泣いてくれた人なんて中々いない」
「……あ…」

そういえばあの日泣いたんだっけ

「…はい」

先生はコーヒーを差し出すと自分の椅子に腰かける

「そういえば君の名前、教えてくれよ」
「え?」
「美術の授業もほとんど出てないし、こないだも聞き忘れた」

そう言って肩をすくめる先生が少し可愛くて思わず笑みをこぼす

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