先生の手が触れる時


美術室では緑川が一人、さっき女子生徒が出ていったドアを見つめ
そのあと、彼女がいつも見ている絵に視線を移す

「…君が、求めてるものは…なんだ?」

キャンバスのなかで溺れていく女の子はまるで、先程の遠野凪のようだと思う

「君が溺れているのは…」

そこまで呟いて、緑川は残りのコーヒーを飲み干した

そして空をあおぐ

彼女の瞳にある確かな闇は何だろう
冷めたもう1つのコーヒーを見つめる

「遠野、凪……」




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