クールなお医者様のギャップに溶けてます
花絵が言うように開き直るしかないって思ったものの、やっぱり色々考えちゃって、昨日はあまり眠れなかった。
寝不足でフラフラする。

でも仕事は仕事。患者さんには関係ない事だ。
顔を叩き、気持ちを切り替えてから、準備をちゃちゃっと終わらし、先生を呼びに行く。

「じ、神野先生、け、検査…よろしくお、お願い、します。」

うぅ、妙な緊張で口が上手く動かない。
医療用手袋の中の手はじっとり汗をかいている。

何も言わずに椅子から立ち上がった先生はさっさと内視鏡室へ入って行ったけど、私は足も動かないよ。

ていうか、「はい」位、言ってくれても良くない?
面と向かっては言えないから、心の中で叫ぶけど、なんか虚しい。

先生の後ろ姿を見ながら小さくため息をつく。

「これから検査始めますよ〜。楽にして下さい。あっという間に終わっちゃいますからね。」

優しい声掛け、優しい微笑みは3年前と変わってない。
患者さんに触れる事で患者さんの力がふっと抜けるのも変わらずだ。

スタッフに厳しいのも変わってないんだろうな。

あのため息だけはつかないで欲しい。

先生のそばに立ってるだけで、足がガクガクしてるのに、もしため息つかれたら多分、逃げ出してしまう。
でも、そんな事許されない。患者さんのために、集中しなきゃ。
大丈夫、今までやってきた通りにやればいいんだ。

深呼吸して気持ちを落ち着かせた時、無言でファイバーを向けられた。

こちらも無言で潤滑剤をファイバーにつける。
緊張で手先が震えたけど、なんとか上手くついてホッとする。

そこからは手際が良すぎる位スピーディーな検査が始まった。
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