クールなお医者様のギャップに溶けてます
「記憶は良い方なのか?」

なんなの?また私、何かやった?また怒られるの…?
怖い。
まだ仕事残ってるから逃げ出せないし、どうしよう。
これ以上、先生の方は見れない。
行儀悪いけど、手元にあるファイバーに視線を戻し、洗いながら対応する事にする。

「き、記憶は悪くないはずですが、よ、よくもないです。」

「へぇー。じゃあ、俺の事は覚えていないのか?」

「え?」

思わず振り返ると先生がすぐ隣に立っていた。

うわぁ、綺麗なお顔ですこと。
…って何て言った⁈

「3年前の記憶はないのか?」

先生の真顔が怖くて顔を背けたが、顎を掴まれ向き合う形に戻る。

「覚えていないのか?」

真剣な表情の先生の視線にドキッとする。

「お、覚えて、いま…す。」

忘れてしまいたかった。
忘れてしまえるように知識を被せる事であの日の記憶を頭の奥底に沈めたのに…。
先生のせいで鮮明に思い出してしまった。
ほら、また胸がモヤモヤし始める。
逃げたい。
怖い。

「記憶力は悪くないようだな。」

「あ…あの時は…すみませんでした。」

しまい込んでいたけど、思い出してしまったあの時の気持ちが無意識に溢れ出てくる。

あの時、すぐに私が謝っていれば違ったのかもしれない。

ずっと謝らなかった事を後悔していた。

その想いが自然と声に出ていた。
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