誘惑して、キス
その手の感触にきゅんとしつつ、さっき浮かんだ考えをまた思い出す。
いやいや、そんなこと。
……でもやってみる価値は、……ある?
頭の中をフル稼働させながら考える。そんなことをしているうちに彼の背がだんだんと遠ざかってしまう。
よし、もうこうなったら、どうにでもなれ。
「せっ、先生!」
彼がバスルームに続くドアに手をかけた。それと同時に声をあげた私を少し驚いた様子で見ている。
「なんだ、急に」
「えっと、」
どうした、と困惑した表情を浮かべながらも私に歩み寄ってくれる先生はやっぱり優しい。
その態度が嬉しくて仕方がない。
もし私が犬で、おしりに尻尾がついていたら、ぶんぶんと振り回していることだろう。
「えっと、先生、」
「何」
「私もお風呂に入りたい、です……」
小さな声で話す私を見て、先生がため息をつく。
「言ったろ、お前はまだ酔ってるからまだやめたほうがいい。危ないだろう」
「あの、だから、」
「せめてあと三時間は、」
「せ、先生と一緒に入りたいんです!」
言ってしまった!!
私のいきなりの"一緒に"発言に先生は目を丸くして驚いている。それもそのはずだ、今までそんなことを言ったことがないし、一緒にお風呂に入るなんてもってのほかだからだ。
一瞬、沈黙になる。
だけどすぐにそれが破られた。
「どうした、お前がそんなこと言うなんて」
「だっ、ダメですか?私、先生とお風呂に入りたいんです」
「駄目とかそういうのじゃなくて。お前今までそんなこと言わなかっただろ?まだ酔いが覚めてないんじゃないのか」
「……気分が変わったんです」