誘惑して、キス
つい、下唇を噛む。
それに気付いた先生はすぐに私の唇に親指をそえると、血が出る、と制した。
「急にどうした、誰かに何か言われたのか」
「違います、……ただ先生と一緒に入りたいだけで」
ソファに座る私と目線を合わせるように目の前にしゃがみこんだ先生。大きな手で私の頬を撫でる。
「だとしても急すぎるだろ。それに今俺にはお前が無理しているようにしか見えない」
「だ、だって」
そこまで言いかけて、やめる。口を尖らせる私はまさに子どもだ。
だって?、と促す先生を目をもう一度見る。
そして、意を決して口を開いた。
「せっ、先生が」
「俺が?」
「先生が、エロい人が好きだってっ……!」
先生と付き合うようになってから一年半が過ぎ、あることがきっかけで転がりこむようにここに住むようになってからは半年になる。それだけの時間を一緒に過ごしてきた。
なのに何故か周りからは。
私が一方的に先生に惚れていて、"付き合っている"というよりも"私が先生になついている"ように見えるらしい。
……まぁ職場の人たちには誰にも付き合っていることを公表していないせいもあるけれど。
だけどだ。私たちはちゃんと好き同士で付き合っているいるのにも関わらず、そう見られるのは何故だろう。そう考えた時にたどり着いた答えがこれだった。
私は先生と全く釣り合ってないのだ。
もやもやした気持ちが、ストンと落ちたような感覚だった。なるほど、だったら私が先生に似合うような女性になればいいんじゃないか。
そこで私がとった行動があの居酒屋での一コマになったわけだけど。
……なんだか失敗だったみたい。