誘惑して、キス


しばしの沈黙。

私の放った言葉を聞いた先生は、その目を更に丸くする。

そんな姿も格好いいけど、と思っていると、なんと先生は吹き出した。


「あっはははは!」

「せんせ?」

「あぁ、言ったな、エロい女。あぁ、それで」

なるほどな、と納得したように頷く先生。だけどこっちからしてみたら全く納得いかない。

こっちは大真面目なのに!


笑いを堪えているようだけど、全く隠しきれていない。くつくつと喉を鳴らして笑う先生を見ていると、なんだか腹がたってきた。

「も、元はと言えば、先生がエッチな人が良いって言うから……!」

「間違えるなよ、"俺だけにエロい女"だ」

「そんなの、いっしょです……」

わかってねーな、なんて言葉を呟く先生を、抗議の意を込めて睨む。しかしそんな小さな反抗も意味はなかったようだ。


"俺だけにエロい女だ"

居酒屋さんで聞いたあの言葉。まだまだ子どもな私が先生に釣り合うようになるには、まず先生の好みの女性にならないといけない。

そんな思いで聞いた質問に対する答は、私には思いつきもしないものだった。

エロい人?エロいって、なんだろう?

私の小さな頭で大真面目に考えているうちにたどり着いた答えが"一緒にお風呂"だったのだ。


「どうしたら先生に似合う女性になれるんでしょうか……」

「ん?」

「先生は大人で、なのに私は子どもっぽくて。先生に釣り合う大人な女性になりたいんです」

いくら考えたって答えが見つからない。あぁ、もう。私のスタイルがもう少し良かったら、振る舞いがもう少し落ち着いていたら。

あんず酒で酔っている私が、そんな風になれるにはどれくらいかかるだろう。

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