天狗娘は幕末剣士
ふいに、彼女はゆっくり頭から手を離し、顔の前まで持ってきた。
「私は……私はっ……」
震える声で、そう呟いた後、杏子はその場にドサッと倒れ込んだ。
「杏子!!」
俺はすぐに彼女へ駆け寄った。
「杏子、おい、しっかりしろ!!」
抱き上げて名前を呼ぶも、気を失っていて返事はない。
「これで分かっただろう、遠野杏子はバケモノだ。
お前達、人間とは生きる世界が違う」
そう言うと、白竜は俺の前に立ち、剣先を杏子に向けた。
「しかし、こいつは全もののけを裏切った天狗一族の生き残り。
こちらの世界に来たところで、帰る場所など無いがな」
白竜は刀を構え、真っ直ぐに杏子に向かって振り下ろした。
俺はそれを、すばやく愛刀で受け止めた。
「……俺の目の前で、簡単にこいつを殺せると思うなよ」
「人間め……何故その女を庇う。
そいつは、どこにも帰る場所の無い、哀れな女だぞ!」
白竜の眉間に皺が寄る。