天狗娘は幕末剣士
「帰る場所なら、あるさ」
「なに?」
「こいつには、家がある。
会津中将御預り浪士隊、新選組。
その屯所が、こいつの家だ」
俺は、杏子を抱き止めている手に、ギュッと力を入れた。
「俺が、俺達が、杏子の帰る場所だ!!」
そう叫んで、俺は思い切り白竜の刀を振り払った。
「新選組、か……フンッ、おもしろい」
すると、突然白竜の周りで強い風が巻き上がった。
その風から庇うようにして、俺は杏子を抱き寄せた。
「今日のところは退いてやるが、俺は必ず、そいつを殺す。
だが、覚えておけ、そいつの敵は俺だけではない」
「なんだと?」
「天狗は裏切り者の一族。
全もののけが、そいつの敵だ。
そして、そいつを庇うというならば、お前達新選組も全もののけを敵に回すということになるぞ」
「望むところだ。
杏子は、何があっても守り抜く」
「ほう、そうか。
ならばやってみせろ。
いいか、天狗、遠野杏子は俺達もののけが必ず殺す」
白竜がそう言うと、いっそう風が強くなり、俺は思わず目を瞑った。
再び目を開けると、すでに白竜の姿はなかった。