『本気の恋愛』始めましょ
「髪切ったんだね」

「何も言わなくていい」


「可愛いじゃん」

「だから何も言わないでって」


「かなえ。めちゃ似合う」


 私が計都の視線から逃げるように急ぎ足で歩く。競歩に近いくらいの速さなのに、その横を計都は優雅に歩いてくる。


 どんなに急いで歩いても計都と私の間は開く気配はない。


 私が息切れした瞬間に彼はスルッと私の横を通り過ぎた。


 計都は182㎝の長身。


 その高い身長から振り向き、上からの視線を私に浴びせるとニッコリと笑う。それも綺麗すぎる笑顔は眩しいほど。悔しいけどこの身長差だから、下から睨むくらいが私に出来ることだった。


「おはようございます」


 会社に着き、気持ち小さめの言葉で声を出すと、その横で、いつもと変わらない計都の声が響く。もう少し空気を読んで欲しいのに、そんな空気は計都には読めないらしい。
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