『本気の恋愛』始めましょ
 昼からの会議の準備はこの課で一番下っ端の私と計都の仕事。資料を並べ、ペットボトルのお茶を準備する。パワーポイントが使えるようにパソコンをセッティングして…。やることはいっぱい。


 ドアを開けて会議室に入ると、カーテンの閉まった部屋は薄暗く、カーテン越しの光が緩やかに室内を照らしている。廊下の奥にある会議室はいつも使わないので埃っぽい。そんな埃っぽさを払拭するように私が窓を開けると、涼しげな風が吹き込んでくる。


 舞い上がる埃が出てくれたらいいと思うけどそんなに簡単にはいかないだろう。


 窓からの風でサラサラと切ったばかりの髪が靡いていた。

「何で髪を切ったんだ?」


 窓際で風の優しさを楽しんでいた私に後ろから声がする。その声は私のすぐ後ろから聞こえて、私の身体はスッと影に包まれる。振り向けばぶつかってしまいそうなくらいの距離に気配を感じる。


 身長差の圧迫感は半端ない。目の前に立つだけでも圧迫感はあるのに、背中に感じる影だけで存在感を表すなんて…。
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