オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ

息を止め、両手を下腹部に当てる。

これまでは鈍痛のような痛みだったのに、何故かキリキリした痛みが。

京夜様を困らせたから、神様が怒ったのかしら?

思わず呼吸が乱れるほどに痛みが続く。

すると、布団越しに彼の溜息が聴こえて来た。


「分かった分かった。俺の負けだ」


溜息交じりの声と共に掛布団の端が捲り上がるのが分かり、

私は瞬時に体を捻り、彼に背を向けた。

捻ったことで別の痛みも伴ったが、その痛みは本当に僅かで。

それよりも先に帯びた痛みの方が数倍も強くて。

無意識に肩先が震え出すのを必死に堪えていると、

背後から長い腕が伸びて来た。


「そう拗ねるな」

「拗ねて………ませんっ」

「ハイハイ、分かった分かった」


拗ねた子供を宥めるように、京夜様は優しい声音で囁き、背後から抱きしめてくれる。

シルクの布地越しに密着する体。

直ぐに体温が伝わってくる。

肩先から腕を摩られ、その安堵感で次第に痛みが和らいでいく。

それはまるで、京夜様が傷みを取り除いて下さっているかのように。


「あまり、俺を困らせるな」

「………ごめんなさい」

「俺にだって、心の準備ってものが必要だから」

「え、そうなんですか?」

「そりゃそうだろ。思うままに行動したら、とんでもないことになるぞ?」

「えぇっ?」


思わず首を傾げ、彼の顔を仰ぐと。


「おっ、やっと見たな」

「へ?」

「背を向けたまま、俺の方を見ようともしなかっただろ」

「…………」


下腹部が痛くて、それどころじゃなかっただなんて口が裂けても言えない。

何て言い返せばよいか言葉に詰まっていると、チュッと唇を奪われた。


「何もしないとは言ってない」

「ッ?!」


不敵な笑みを浮かべる彼。

だけど、きつく抱きしめるのではなく、

そっと寄り添う程度に腕を回す感じからしても、彼が労わってくれているのが分かる。

これ以上、彼を困らせるのは止めよう。

彼のベッドに潜り込めただけでも大収穫だもの。


首筋に少しチクチクとした感触があるのは、彼が男性だって証。

そんな些細なことに感動しながら、彼のぬくもりに包まれて――――


< 369 / 456 >

この作品をシェア

pagetop