オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
息を止め、両手を下腹部に当てる。
これまでは鈍痛のような痛みだったのに、何故かキリキリした痛みが。
京夜様を困らせたから、神様が怒ったのかしら?
思わず呼吸が乱れるほどに痛みが続く。
すると、布団越しに彼の溜息が聴こえて来た。
「分かった分かった。俺の負けだ」
溜息交じりの声と共に掛布団の端が捲り上がるのが分かり、
私は瞬時に体を捻り、彼に背を向けた。
捻ったことで別の痛みも伴ったが、その痛みは本当に僅かで。
それよりも先に帯びた痛みの方が数倍も強くて。
無意識に肩先が震え出すのを必死に堪えていると、
背後から長い腕が伸びて来た。
「そう拗ねるな」
「拗ねて………ませんっ」
「ハイハイ、分かった分かった」
拗ねた子供を宥めるように、京夜様は優しい声音で囁き、背後から抱きしめてくれる。
シルクの布地越しに密着する体。
直ぐに体温が伝わってくる。
肩先から腕を摩られ、その安堵感で次第に痛みが和らいでいく。
それはまるで、京夜様が傷みを取り除いて下さっているかのように。
「あまり、俺を困らせるな」
「………ごめんなさい」
「俺にだって、心の準備ってものが必要だから」
「え、そうなんですか?」
「そりゃそうだろ。思うままに行動したら、とんでもないことになるぞ?」
「えぇっ?」
思わず首を傾げ、彼の顔を仰ぐと。
「おっ、やっと見たな」
「へ?」
「背を向けたまま、俺の方を見ようともしなかっただろ」
「…………」
下腹部が痛くて、それどころじゃなかっただなんて口が裂けても言えない。
何て言い返せばよいか言葉に詰まっていると、チュッと唇を奪われた。
「何もしないとは言ってない」
「ッ?!」
不敵な笑みを浮かべる彼。
だけど、きつく抱きしめるのではなく、
そっと寄り添う程度に腕を回す感じからしても、彼が労わってくれているのが分かる。
これ以上、彼を困らせるのは止めよう。
彼のベッドに潜り込めただけでも大収穫だもの。
首筋に少しチクチクとした感触があるのは、彼が男性だって証。
そんな些細なことに感動しながら、彼のぬくもりに包まれて――――