オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
私が『初恋』の相手なの?
酔って口走った言葉とは言え、全くゼロだとは思えない。
本人が覚えている『初恋』と実際の『初恋』の相手が違ったとしても、それでも構わない。
彼の口から、それらしい言葉が聞けただけで。
パタンとドアの閉まる音が廊下に響き、扉の向こうに彼の姿が消えた。
「さて、やりますか」
カーディガンの袖を捲り上げ、後片付けをしにリビングへと踵を返した。
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自室へと戻った私は急いでバスルームへと向かおうとした、その時。
どこからともなく甘い香りが漂って来た。
ん?
何の匂い?
いつもとは違う自室の香りに動揺しながらも、
その主がどこかにいるのだろうと、辺りを見回すと。
「あっ」
サイドテーブルの上に見たことのあるものが置かれている。
もしかしなくても、……京夜様よね?
視線の先には、京夜様愛用のディフューザーが。
心が小躍りしているのが分かる。
だって、漂っている香りは、私好みの香りなんだもん。
私の為にセッティングしてくれた事が何より嬉しくて、涙腺が緩む。
ふと、その視界の片隅に捉えたモノが……。
私を盗撮マニアか何かと勘違いした代物がそこに。
白いタキシード姿の彼が長い脚を綺麗に組んでソファーに座り、
少し骨ばった細長い指でタブレット端末を操作する斜めからのアングル。
お気に入りのショットだけに、いつでも見れるように飾ったもの。
「こんな風にいつでも見れる所に飾りたいと思うのは、きっと私だけなんだろうな」
京夜様の部屋はスタイリッシュかつシックで。
大人のデキる男というのが相応しい部屋だものね。
アロマの香りを堪能していた私は、サイドテーブルに置かれている時計に視線が止まった。
「あ、こんな時間」
幸せ気分にすっかり浸っていた私は慌てて腰を上げ、急ぎ足でバスルームへと。
家事をしたことで掻いた汗を洗い流し、メイクもしっかりと落として……。
傷口は殆ど塞がり、シャワーの湯が沁みる事も無くなって来たけど、
やはり、見た目はまだかなりグロテスク状態。
とても人目にさらしたりは出来ない。
シャワーを浴び終えた私は傷口の手当てを施し、スキンケアをする。
そして、髪を乾かし終わると、鏡に向かい瞼を閉じた。