オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
あの事件以来、寝ることが辛くなっていた。
目が覚めた時、体が思うように動かず、
ずっと天井ばかりを見続けていたからだと思うけど。
天井がズズズッと鼻先1センチくらいの所まで急降下して停止する感覚に陥る事がしばしば。
重厚な鉄板に押しつぶされそうで、息も出来ないほど苦しくて。
目だけがキョロキョロ動くばかりで、寝返りを打つどころか、布団を捲る事さえ出来ない。
金縛りなのかよくわからないけど、心理的な問題だと思う。
誰かに相談したことはないけど、恐らく心的外傷みたいなものかもしれない。
だから、こうして寝る前には精神統一をはかる。
別に睡眠不足だからといってすぐに倒れてしまうような軟な体ではないけど、
さすがにお肌が荒れるのは勘弁して欲しい。
大好きな人がすぐそばにいるのに、吹き出物だらけだったら嫌だもん。
鏡に映る自分に、何度も何度も念じるように暗示をかけて………。
「よし」
両頬を手で軽く叩いて気合を入れた私は、鏡に映る自分に笑顔を向けた。
息を潜めて足音も立てず、
慎重にドアを開け、
フットライトが灯る廊下を数歩進み、
ゆっくりゆっくりと
ドアノブを捻る。
そして、覚悟を決めて押し開け、
今世紀最大の緊張と共に中へと。
踵を返し、再び慎重にドアノブを捻り
これ以上押せないという所までゆっくりと押した。
全身で脈を打っていると思うくらいドクンドクンと鼓動を感じ、
真夏なのに極寒の地にいるみたいに震えが止まらない。
だけど、ここまで来て
……………止める訳には。
ごくりと生唾を飲み込み、震える足で。