オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


話を聞くと、ご主人も医師らしく、

世界中を巡りながら自分を必要としている人たちに寄り添い、

治療を施しながら、様々な研究をしているという。

志の高い彼に惹かれ、そんな彼を心から尊敬し、

彼の意志が貫ける形を最優先に考え、今の生活に至ったという。

愛しているからこそ信じることも出来るし、待つことも苦ではないらしい。


初めての子育てで不安もあるだろうに、

エイミーはそんな事には一切触れなかった。



エイミーは現在育児休暇を取っており、

郊外の家でゆったりとした時間を過ごしているという。

そんな彼女が少し羨ましく思えた。

籍を入れていなくても、大切な人と毎日逢えなくても、夫婦という強い絆があることと。

何より、大好きな人の子供を授かったということが……。


今の自分には遥かに遠い存在というか、

ずっと思い描いていた理想の姿がそこにあった。



********


木々に覆われた緩やかな坂道の先に見えたのは、

淡い茜色に染まりつつある空を映した壮大な湖。

一瞬で目を奪われ、心も吸い込まれてしまいそうなほどの絶景だった。


「キィ~ワ、どう?キレ~イ?」

「…………うん」


エイミーは優しく微笑むと、スピードを落とし、じっくり眺められるようにしてくれた。

湖畔に佇む風車が徐々に小さくなっていくのを視線の端に捉えながら、

ボーっと夕焼け空を眺めていると、車は静かに停車した。


「マイホームよ~」

「えっ?」


エイミーの声に反応するように振り返ると、そこには可愛らしい白いコテージが。


「ララ~」


エイミーはぐっすり寝ているララを優しく起こし抱き上げ、手招きした。

辺りに人家は見当たらず、人気も無い。

大自然の中にひっそりと佇む隠れ家のよう。


起こされたことで愚図るララをあやしながらエイミーは玄関へと向かう。

そんな彼女の背中を見つめ、心から感謝した。

突然日本を離れた理由すら聞かないことに………。


「キィ~ワァ~!」

「今行く~」


後部座席からスーツケースを降ろし、彼女の後を追った。


< 405 / 456 >

この作品をシェア

pagetop