オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
京夜side
ダイニングの床にへたり込んだまま夜を明かした。
たった6文字しか書かれていない紙を握りしめて。
ジャケットの内ポケットから無機質な音が漏れてくる。
それは、午前6時を告げるアラームで
早起きを習慣づける為にジョギングを夜から朝に替え、
少しでも彼女の負担を減らそうと俺なりに考えたことだったがーーー。
彼女がいなくなってもいつもと同じ事が起きる事に、胸が苦しくなる。
一晩中呆然としながらも、
何故?
どうして、今?
いつから、考えていたんだ?
何で、また……?
どこに?
誰と?
考えても考えても答えは見つからなかった。
不意に彼女が俺をビックリさせようと突然帰って来るんじゃないかと、
無意識に玄関の方に何度も視線が向いてしまう。
けれど、俺の目の前に彼女は現れなかった。
静かに瞼を閉じ、深呼吸。
その時、霧が一瞬で晴れたような感覚に陥った。
「そうだっ」
俺は無我夢中で駆け出していた。
*********
「早くしろ!」
「はい、申し訳ありませんっ」
「謝ってる暇があるなら、とっとと探せっ!」
目を大きく見開き、目の前のモニターに釘付けになっていると。
「あっ、いました!6番のモニターにキャリーケースを手にしてる女性がっ!」
マンションの管理室で防犯管理モニターの録画をチェックすると、
昨日の午前11時過ぎにマンションの裏手に向かう人物を捉えた。
視線の先にいたのは、紛れもなく彼女だった。
キャップを目深に被った後ろ姿だけで本当に彼女だと言い切れるか?と聞かれれば、
少し前の俺なら疑っていたかもしれない。
けれど、今の俺には分かった。
後ろ姿だけでも彼女だと。
俺にしか分からない、俺だから分かる。
彼女だという証がモニターの中にあった。
俺はすぐさま執事の吉沢に連絡を入れ、彼女の足取りを調べるように指示した。