恋唄
出会い



ふぁぁ…。
ねむ。


あーあ。もう朝か。
まためんどくさい学校が始まる。
愛しかった春休みが終わりを告げた

準備しなきゃ

気だるけに俺は学校に行く準備をはじめた



俺の通ってる花咲高校は俺ん家から電車で3つくらいの所にある公立高校だ。
制服はまぁマシな方で偏差値も普通である。まさに平凡が似合う高校だ。


俺は如月 陸(きさらぎ りく)
特にとりえのない高校2年生だ。

「おーい!りーくっ!」

友達の藤根 英二(ふじね えいじ)が俺を見つけた途端に走ってきた
こいつは髪を茶髪に染めているけど制服をきちんと着ているギャップがすごい

俺は生まれつきの黒髪でかるく着崩してる

「今年も同じクラスになれるといーな!俺、陸がいないとつまんねーよー」
「確かに。俺も英二がいないとつまんねーわ。お前ほど俺のことわかってるやついねーしな!」
「あ、てか奏が新しい曲出すんだってー!」
「あー。英二から借りたCDまだ聴いてないわ。ほんと奏のこと好きだなー」
「当たり前だろっ!めちゃくちゃいーじゃん!」


奏(かなで)とは今高校生のなかで大人気な4人組のバンドだ
メンバーのほとんどが高校生らしくて歌詞に共感する人が多いらしい

英二は熱狂的な奏のファンだ

「陸っ同じクラスだぞっ!」
「まじか!やったな!」

英二と同じクラスになったことを喜んでからは長い長い始業式と帰りのHRを終えて俺はバイトに向かった

俺のバイト先は学校の最寄駅から2つ先のところにある古風なカフェ
子どもから大人まで来れる人気のあるカフェだ




「いらっしゃいませ」
上下関係もなくラフな感じが俺に合っている
「なぁなぁー」
「なんですか先輩」
バイト中に仕事もせずに絡んでくるのは長島 雄一郎(ながしま ゆういちろう)金髪のチャラい感じの先輩だ
もちろんこんなんでも大学生である
「あの子、今日も来てるな!」
「あの子…?」
先輩の見ている方向に目をやると1人の女の子がカウンターに座っていた
その子はほとんど毎日カフェに通っていて決まってコーヒーを一杯飲んでいる
「別に興味ないんで」
「そんなこと言うなよー!よく見ればかわいいんだって!」
「口説けばいいじゃないですか」
「俺にそんなことできると思う?」
先輩はチャラそうに見えて実はシャイボーイだ。
今だに彼女は1人しか付き合ったことがないらしい

くだらない先輩の話を聞いてたら店長に怒られたので俺たちは仕事に戻った

バイトが終わりまだ肌寒さを残している駅までの道のりを歩きながら英二からのLINEを見た

『奏の新曲聴いた?もう最高!やばいよ!陸もちゃんと聴けよー?CDもな!』


「ほんとにあいつは好きだなぁ…」

ぼそっとつぶやいた時

ドンッ

「うわっ」
「きゃっ」

誰かとぶつかった途端に俺とぶつかった人の荷物が散乱してしまった

「ごめんなさい。大丈夫?あ…。」


ぶつかった子はほとんど毎日カフェに来ていたあの子だった

初めて近くて見たその子は綺麗な黒髪でショートカットがすごく似合っていた。
細い身体には不釣り合いな大きいギターケースを背負っており、そしてとても綺麗な顔立ちをしていた。

「すみませんっ。」

彼女は急いで散らばった荷物を拾い走って行ってしまった

「あ、俺の荷物…」

そして散らばった自分の荷物を拾い家に帰った






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