俺様魔王の甘い口づけ
「芽衣子さま、おかえりなさいませ」
穏やかな微笑を浮かべ帰りを迎えてくれたハンスが恨めしい。
戻ってきてしまった。
元の世界に帰るつもりだったのに、結局戻れもせずまたここに。
「お戻りにはなれなかったので?」
「…見たらわかるでしょ」
それをわざわざ聞くなんて。
イライラをぶつけてるのはわかってる。
八つ当たりだってことも。
でも、そうしなきゃ気が済まない。
さっきのルイのことだってそうだし。
「では、もう一つ、見たらわかることをお聞きしますが…。その血は、いったい…」
そもそも、そっちの方が先じゃないの?
別にどうでもいいけど。
「あんたんところの冷酷魔王のせいよ」
「芽衣子さま。…ですが、ルイさまが森にですか?それはまた驚きですね…」
「なにが」
呼び方を指摘しながらも、不思議そうに首をかしげる。
「ルイさまはあの森にはあまり近づかれませんから。あの森にいる魔物は低級だと、あまり関わり合いになりたくないからと」
「…へえ」
「そんなルイさまが森に行かれたという事でしょうか?」
「いたんだから、そうでしょうよ」
知らないわよ。
なにか用でもあったんじゃないの。