俺様魔王の甘い口づけ
「なんで殺したりしたの」
「命拾いしたくせに、その言いぐさか」
「殺さなくたってよかったでしょ!」
そりゃあ怖かったけど、怖かったけど…殺すことはなかった。
どうしてそんなに簡単に殺せるの?
「俺に指図するな」
「っ、だったら、なんで助けたのよ!」
「お前は非常食だと言っただろう。俺の物に手を出されるのは癪に障る」
「…なによ」
結局は、ここで助かったって同じじゃないか。
あんたも、この魔物も同じだ。
ポロポロと溢れてくる大粒の涙。
唇を噛みしめても、効果はなくただポタポタと落ちていく。
「なぜ泣く」
「…うるさい」
私がそう言うと、ルイからは舌打ちが聞こえた。
もう、消えてほしい。
私の目の前に、現れないでほしい。
きっと、私のことだって何の感情もなく切り捨ててしまえるんだ。
そんな人と同じ場所にいたくなんてない。
嫌いだ。
この人、嫌い。
「帰る」
戻れないのなら、ここにいたって仕方ない。
ルイがここにいるのなら、私が消えてあげる。