俺様魔王の甘い口づけ
「え…?」
しかし、通り抜けた先に広がる景色に、私は目を疑った。
街特有のごちゃごちゃした雰囲気は消え去り、ビルや信号、行き交う車もどこかへ消えた。
ただ、広がるのは枯れ果てた大地と、夕方だったのに、薄暗い空。
「な、なに…どうなってんの?」
いったいなんの冗談なんだ。
街中にこんな場所があるはずがないし、今まで暮らしてきて気づかないはずがない。
でも、確かにある。
なんで?
広がる光景に、何度もパチクリと瞬きをする。
何度見ても、変わらないその景色に現実なのだと気付かされる。
もし、仮に本当にこんな場所が存在するとして。
一つだけ、腑に落ちないのは、さっきまで明るかったあの空だ。
太陽の姿はある。
それなのに、こんなにも薄暗い。
きりがかっているような靄の中。
不気味な雰囲気を醸し出していた。