俺様魔王の甘い口づけ
「ここは、あ…、ル、ルイのお城でしょう。だから、ルイが案内してよね」
「…どういう理屈だ」
初めて、名前で呼んだ。
不本意ながらも仲良くしようとしている相手をあんた呼ばわりするのもね…。
ハンスのためだと思って。
「だから、いいでしょ?それともなに、なんか用があるの?」
「貴様は、自分の立場というものがわかってるのか」
「非常食でしょ。わかってるわよ」
例えそうだとしても、その時まではどうするか私の勝手だし。
それに、そうやすやすと食われてやるもんですか。
私がそうつづけて言うと、ルイはふっと息を吐き出すように笑った。
あ、笑った。
とても微妙な笑顔ではあったけど、確かに笑った。
「つくづく、変な人間だ」
「変って…失礼ね」
「褒め言葉だ」
「は?どこが!」
私は睨みつけるようにルイを見た。
全く褒め言葉に聞こえないんだけど。
チラリとハンスを見ると、嬉しそうに小さく微笑んでいた。
ハンスは、ルイの事が好きなんだね。
こんな冷血魔王のどこがそんなにいいんだろう。
私にも、いつかわかる日が来るんだろうか。