めぐりあい(仮)





小さな婦人科を見つけ、


数分うろうろした後、


思い切って中に入った。


病院内は、可愛らしい


オルゴール音と、


子育てをするにあたっての


本などがたくさん置いてあった。





「どうされました?」




「あの…調べてほしくて」




「はい?」




「えっと…あの、」




場違いな気がした。


周りを見れば、


お腹が大きくて幸せそうに


笑っている女の人や、


産まれたばかりの赤ちゃんを


抱いている人がたくさんいて。


そんな中あたしは、


不安でいっぱいで。


制服なこともあってか、


余計周りの視線が気になる。





「じゃあ名前が呼ばれるまで、座ってお待ちくださいね」




看護師さんにそう言われ、


大人しく長イスに座って待つことに。


目に付く所に、赤ちゃん用の


小物が置いてある。


あたしはそれをそっと手に取り、


眺めてみる。





「可愛い…」





ここにいる人たちは、


すごく幸せそうな人ばかり。


あたしは?


あたしは、今にも


崩れ落ちそうなくらい、


震えが止まらない。


もし。


もし妊娠しているならば。


間違いなく、悠太郎の子どもだ。


そうなればあたしは、


どうすればいいんだろう。


産むことも相談することも出来ず、


どうしたらいいんだろう。





「なわけない…いるわけない…」





不安になる自分にそう言い聞かせ、


名前が呼ばれるのを待った。


手には尋常じゃないくらい、


汗を握っている。


怖い。


もしものことを考えて、


1人で違うと言い聞かせる。





「吉川さん、どうぞ」





名前が呼ばれ、


深呼吸して診察室へ。


中には怖そうな女の先生がいて。





「今日はどうしたの?」





冷たく尋ねて来ると、


他ごとは一切話さずに


問診を続けた。


妊娠しているか知りたい。


そう言うと。





「ベッドに横になりなさい」





淡々とそう言われた。


あたしは言う通りにするしかなく、


白いベッドの上に仰向けに。





「冷たいけど我慢しなさいね」




「はい」




お腹を出すと、何かを塗られ、


マイクのようなものを当てられる。


いるわけない。


そんなわけない。


目を瞑るあたしの耳に、


変な音が聞こえて来た。





「おめでとうございます」





それを聞いて、耳を疑った。


おめでとうございます。


と言われたということは。





「もう2か月と少しになりますよ」





お腹に赤ちゃんが。


悠太郎との赤ちゃんが、


いるということ。





「そんな…だって、9月には生理が…」




「そういうこともあるんです。血が少なかったんじゃない?」





先生にそう言われ、


確かにそうだったかもと思い出す。


生理だと思ったのに、


いつもより少なかった気がする。





「起き上がって座って」




「…はい」





夢なのかな。


いるわけがない。


あたしが妊娠?


そんなわけない。


そんなわけ…。





「はい、エコー写真」




「エコー…写真」




先生はあたしに小さな写真を


渡してくれた。


それは、どれが赤ちゃんか、


全く分からない写真。





「本当に…いるんですか?」




「いるわよ。ちゃんとね」




くすりとも笑わず、


傍にいた看護師さんに、


温かいお茶を出すように指示。


あたしはそれを受け取ると、


写真をただ眺めた。






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