めぐりあい(仮)





「悠太郎…、待っ、」





「ごめん、待てない」





何をそんなに不安になってるの?


何があったの?


何で、教えてくれないの?





「ん、っん…」





悠太郎に抱えられながら、


ベッドの上に降りる。


制服のボタンが外され、


肌に悠太郎の手が触れる。






「ね、悠太ろ…、待って」





「無理」





「何かあった?仕事?友だち?ね、悠っ…」





一気に話すあたしの口を、


自分の唇を押し当てて話させようとしない。


苦しくて、逃れたくて、


息が荒々しくこぼれる。






「妃名子が欲しい」





「あたし、ここにいるよ?」





「愛してる」





愛しいと思う。


この男のことを。


だからこそ思う。


居すぎちゃいけない。





「あっ…やだ、」





「妃名子、可愛い」






この人の傍にいる度に、


何回も離れようと思う。


だけど、居すぎて。


時間が経ちすぎて、


簡単に離れられない。


一緒にいたい。


その思いに、どの感情もが


負けてしまう。


ごめんなさい。


愛しすぎて、ごめんなさい。


何度もそう思う。






「悠太郎」





「ん?」





ベッドの中央。


あたしを抱き終えた悠太郎は、


いつもの彼に戻っていた。






「どうかしたの?」





「ごめん。嫉妬した」






耳元で囁きながら。






「今日、蓮と千秋と会ってること、俺知ってたんだ」





「あ、そうだったの?」





「会社で聞いた。いいよ、なんてかっこつけたけど、やっぱりどうしても心配で」






悠太郎も、人並みに


嫉妬なんてするんだな。






「ごめん、こんなつもりじゃ」





「ううん、嬉しい。ありがとう」





可愛い感情が悠太郎の中で、


いっぱいになる。


それをあたしは感じながら、


少し頬を赤く染めた。






「愛してる、妃名子」





だけど。


この極上の愛情表現は、


ただただあたしを悲しくさせるだけ。


あたしを愛してるんだったら。


家族を捨てて、あたしを選んでよ。


それを言うのは、絶対にだめ。


なぜならそれは、


あたしたちの関係が


終わってしまう合図なのだから。







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