めぐりあい(仮)
それから何事もなく時間が過ぎ、
いつの間にやら夏休みに入った。
休み入って2週間近くが経ったけど。
あたしは相変わらず、
バイトか遊ぶか家でゴロゴロ。
鳴海は最近千秋さんと遊んだ、とかで
1人で浮かれて楽しそうだし。
悠太郎は忙しそうで、
全然連絡くれないし。
それに。
それに、蓮哉なんて、
いつでも連絡しろなんて言っときながら、
自分から一切連絡なんてくれないし。
「かけちゃえ」
そう思い立った昼の1時半。
携帯を片手に電話帳を開く。
蓮哉の画面を出すと、
思い切って発信ボタンを
押してみた。
からかうだけ。
声を聞いたらすぐに切ってやる。
ま、どうせ出ないだろうけど。
『誰かと思えば』
なんて、思ってたから、
いきなり声が聞こえてきて驚いた。
「あ、あの…ごめん」
『は?』
って、何謝ってんの、あたし。
何か久々の感じに、あたふた。
「いやあの…。今何してた?」
『やっと、昼飯』
久しぶりに聞く蓮哉の声に、
少しホッとする。
…ん?
ホッとする?
何であたし、ホッとしてんの?
『お前は?』
「え?」
『妃名は何してんだよ』
「あたし、今夏休みで」
そう伝えると、
電話の向こうで羨ましそうな
悶絶が聞こえてきた。
『お前ふざけんなよ』
「仕方ないじゃん。あたしだってやだよ、夏休み」
『何でだよ』
「だってどこも行けなくて、ゴロゴロしてるだけだもん」
だってこれ、本当のことだから。
だから自然と出た言葉。
それをいいことに。
『来週、海行くぞ』
「はい?」
『だから、うーみ。暇なんだろ?』
この男はいつでも強引。
来週別に空いてるし、
まあいいか。
「行く、海」
海か、久しぶりだなぁ。
でも久々の予定に、
少しワクワク。
なんて思っていると。
『何、嬉しそうな顔してんだ、お前。女か?』
という、少し低い声が聞こえて来た。