Miracle of the petal

一目惚れって信じる?






「……はぁ」





やっと、帰れる……。
なんだったの、あの人の多さ。
店を閉じようとしても次から次へと雪崩込んでくるし。




片付けを終え、フラフラの足のまま見慣れた家までのいつもの道を歩く。
まだ、肌寒いけど……春の気配がする。
いつもの道を歩き少しずつ咲き出した花を見て思う。





「……あっ……」






綺麗……。
まだ満開じゃないけど咲いているピンクの小さな花。
家に向かっていた私の足は誘われるがままに桜の咲いている公園へと向かっていた。





満開じゃないのが残念だけど……咲きかけも綺麗。
なんか春の訪れを目の辺りにしているようなそんな気分にもなった。
綺麗なもの見るとなんで疲れを忘れられるんだろ……これなら明日も仕事頑張れるな。なんてことを考えながら桜に近付く。





――ん?誰か……いる?





近付けば近づくほどはっきりとわかる黒い影。
男の人……?
目を凝らして桜の麓を見ると……。





「……え……」





私の目に映ったのは綺麗な綺麗な男の人。
桜を見上げるその姿は綺麗過ぎて私は見惚れてしまった。
この人もここの桜に誘われたのかな?なんだか、そんな気がする。





そう考えると無意識のうちに私の足は動いていて足元からパキッと言う音が夜の公園を響き渡る。
やば……。
視界の先にいた人が音に気付き私の方を向く。





「……っ!?」







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